第三章
3−2
くんくんとあまり効かない鼻を頼りに食べ物を探しているとドタドタ「忙しい忙しい」と豚が廊下を走ってきました。
「なんだお前は!こんなところで油を売りおってなにをしている!?」優しさのかけらもなくその豚はタルトに言いました。
タルトは何か勘違いしている豚の態度にビックリしてしまいました。と同時に腹が立ちその豚のスネを思いっきり蹴ってやりました。
タルトには理不尽に立ち向かう勇気がありました。
勘違いしている豚は大きな声で喚き、ほんの短い間によくこれだけの悪口が出せるものだと感心してしまうほどの罵詈雑言をタルトに浴びせました。主に自分がいかに偉大で力があるかということを言っているだけの程度の低い傲慢な恫喝でしたが幸運なことにタルトには豚が何を言っているのかわかりませんでしたので喚く豚を置いて匂いの方へ急ぎました。
こんな小さな犬の骸骨に蹴られただけなのに勘違いした自称偉大な豚は容易に立ち上がれませんでした。
【あの部屋から匂いがしているわん】タルトはキッチンを見つけました。都合がいいことに誰もいません。置いてある椅子やら荷物などを使い短い手足で器用にテーブルの上に登ると美味しそうなクリームいっぱいのケーキが焼き上がっていました。タルトは匂いだけでこんな美味しそうな食べ物を見つけた自分を誇らしく思いました。そしてタルトはそのケーキに舌鼓を打ちました。
「美味いわん美味いわん」骸骨なのに凄まじい食欲でペロリとすっかりたいらげてしまったのです。
なんだかけたたましいサイレンと赤いランプが回っていましたがすっかり食べてしまうと眠たくなりタルトはその場でぐーぐーと天井にお腹を見せ眠ってしましまいました。
するとドタバタと赤いスカーフをした衛兵たちがキッチンになだれ込んできました。先ほどの勘違いした豚もいます。
「こいつだ俺様を蹴った奴は!あ!楽しみにしていたケーキまで食べてしまいおって!!死刑だ死刑だ!!」
その時自体に気がついたコックスが慌てて皆の前に飛び出しました。
「待ってください、彼はぼくが連れてきました・・・ぼくの友達なんです。」懇願するコックス。
「こいつは俺を蹴った上に楽しみにしていたケーキまで食べてしまいおった!極刑に値する!」
「楽しみにしていたケーキを食べてしまったのはすみません。謝ります。また彼にも注意をします。ですから死刑だけは許してやってください」
「何わしに指図する気か!それならお前も死刑だ!引っ捕らえろ」と言うなり今の今まで仲間だと思っていた赤いスカーフの動物たちがコックスに飛びかかりました。勘違いした豚の一言ですでに彼らの目にはコックスが死刑に値する裏切り者の敵に見えているようでした。
それらをかわしながらコックスは叫びました「蹴って、ケーキを食べただけじゃないですか」
勘違いした豚の顔はみるみる真っ赤になり「だけとはなんだ!俺を誰だと思っているんだ」と怒鳴り青龍等を抜き、仰向けでぐーぐー寝ているタルトめがけ刃を振り上げました!
その刹那、コックスの体は考えるより先に動きました。仲間たち、勘違いした豚を突き飛ばしタルトを抱え岩の1番の外側だったキッチンの壁を突き破りあっという間に森の中に飛び込みました。
「ブヒー」と怒る豚の鳴き声が森中に鳴り響きました。
第三章終わり