第二章

2ー1

ここはバカげたほどの大量の水の勢いも弱まった遠く離れた場所。

鬱蒼と木々が茂るジャングルから倒れた一本の巨木の枝の先に何か赤い布が引っかかっています。

「ブクブク」 よく見るとそのスカーフの先にまた続きがあるみたい。それは川に流されてしまったタルトでした。お気に入りの赤いスカーフが木に引っ掛かかっていたのです。

【は!】タルトは目を覚ましました。
巨木に助けられたタルトは短い足を木にかけてなんとか川から体を引き上げることができました【ここはどこだわん】

タルトは身震いをして自分の体についた水を払いました。さらにまだ濡れている自慢のフワフワの体毛を(タルトは自分が死んで骸骨であることを知りません)ドライヤーと柔らかいタオルで乾かしたいと思いましたが、いつもそれを用意してくれる優しいトニーが今はどこにもいません。

【困ったトニーだわん】そう思ったタルトは体の毛なんてすぐに乾くだろうと思いました。そう彼はけっこう軽い性格なのです。

濡れたスカーフを絞りながらジャングルを見渡すと、自分が住んでいるところの森と全然違うことに気が付きました。木々は何倍も大きく、見たこともない不思議な生き物たちで一杯でした。

ぼよーんぼよーんとオデコについた大きなコブを使い歩く猿(もはや猿がついているコブと言えます)
ギューインと木を切り倒しながら飛ぶ、丸ノコがついたような丸ノコギリクワガタ。

不思議な森に気を取られているタルトの後ろにはしっぽが八股の蛇がよだれをダラダラ垂らして大きな口を開けています。

【はっ!】と間一髪気がついたタルトは全速力で逃げましたが八股の蛇も執拗に追ってきます。

走りながらタルトは考えました。なぜ自分が逃げなくては行けないのか?スプリングウェルに来てから自分の意思で自由自在に出し入れできるようになったタルト必殺の三又の槍を取り出し、振り返り様に思い切り突き出してやりましたが、大きく開けた八股の蛇の口にそっくりそのまま丸っと飲み込まれてしまいました。

三またと八またの戦いは1秒もかからずに決着し哀れタルトは蛇の口から顔をだし鼻で大きなため息をつきました。

【さよならわん】タルトが諦めて残されたわずかな時間に美味しかった食べ物のことを思い出しているそのせつな、ドサリと八股の蛇の頭から1メートルほどの股の付け根部分が落ちました。たまらずもんどりうつ蛇、思わずタルトを吐き出しました。

 

つづく

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